相続放棄の思わぬ落とし穴(前編)

こんにちは。司法書士の粒来です。

これから何回かに分けて、数ある相続のルールのうち、特に間違いや勘違いが起こりやすいポイントについてご紹介していきたいと思います。

『相続放棄』が相続関係に及ぼす影響について

当事務所に寄せられる相続のご相談で、たまに「自分は相続財産を一切受け取るつもりがないので、相続の放棄をしたい。」という方がいらっしゃいます。

ただ、ご相談の結果、そのような方が実際に『相続放棄』の手続を選択されることはそれほど多くありません。

なぜかというと、相続財産を受け取らない方法には、『相続放棄』のほかに『遺産分割協議』というものもあり、ご相談の結果、そちらの手続を選択される方が多いからです。

相続放棄

相続放棄は、家庭裁判所に申述をすることにより、被相続人(亡くなった方)との関係で、自分が最初から相続人でなかった(≓存在しなかった)扱いにする手続です。

はじめから相続人でなかったことになるため、その後は相続手続に一切関与する必要がなくなります。また、被相続人のマイナスの財産(借金など)を引き継ぐ義務も、当然になくなります。

相続人間に争いがある場合や、被相続人に財産以上の負債がある場合には有効な方法なのですが、裁判所を通す必要があるので、手続に手間と時間(あとは司法書士費用)がかかります。

遺産分割協議

これに対して遺産分割協議は、自分が相続人であるという前提で、相続人全員の協議により、相続財産の分配方法を決めるものです。この話し合いで自分が相続する財産をゼロにすれば、わざわざ相続放棄をしなくても、相続財産を受け取らないという選択ができます。

遺産分割協議は「話し合いでプラスの財産の分け方を決める」もので、裁判所での手続も不要なので、相続人間で争いがなく、被相続人に大きな負債もなければ、非常に手軽で有効な方法です。

・・・と、このような説明をすると、だいたいは遺産分割協議で話を進めていくことになるのですが、なかにはこういう方もいらっしゃいます。

「亡くなった夫には自宅不動産とともに借金がある。不動産も借金も妻である自分が引き継ぐことにしたが、万一にも亡夫の借金のことでひとりっ子の息子には迷惑をかけたくない。そこで、遺産分割協議でなく、息子に相続放棄をしてもらうことにした。」

ところが、このケースで息子さんが相続放棄をすると、場合によってはとんでもないことになってしまいます。

どういうことかというと・・・

長くなってしまったので、続きは次回にします。

乞うご期待!