相続登記とは
相続登記について

相続登記とは、不動産を所有していた方がお亡くなりになった際に、その不動産の名義を相続人に変更する手続きです。亡くなった方の死亡届を自治体に提出しただけでは、不動産の登記名義は変更されません。不動産の名義を変更するには別途、法務局に登記の申請をする必要があります。

法務局に戸籍等本等を提出し、不動産の名義人が死亡して、相続人が新たにその権利を引き継いだことを公示する登記手続を「相続登記」といいます。

相続登記を放置すると、こんなトラブルが。
不動産を残すことで、遺産分割の調整が困難に

不動産は価値が大きく、また維持や管理にもコストがかかります。特定の相続人が不動産を取得することで生じるプラスやマイナスの不均衡は、亡くなった方の預貯金があるうちは、その配分を工夫することである程度の調整が可能です。

しかし、不動産を棚上げにして預貯金だけを先に分けてしまうと、相続財産に老朽化した建物がある場合、建物の解体費用が準備できず、不動産だけが引き取り手のないまま延々放置されてしまうということが起こります。

また、不動産に価値がある場合も、預貯金での調整なしに特定の相続人だけが不動産を取得することになれば、他の相続人が納得せず協力が得られないという事態を招きやすくなります。

このようなことを防ぐためにも、不動産の相続は後回しにせず、他の財産と一緒に手続きを進めることをお勧めします。

相続関係の複雑化

相続登記をしないうちに相続人が死亡した場合、さらにその相続人にも権利が分散してしまい、相続手続に参加しなければならない当事者がどんどん増えてしまいます。そのような展開で新たに当事者となった方は、もともと相続人だった方と比べて他の相続人と縁が薄いことが多いため、時間の経過とともに相続の話し合いがまとまらなくなる可能性が高くなります。

また、相続関係が複雑になると、登記申請の際に法務局に提出しなければならない書類も多くなり、その分手続きに余分な時間や費用がかかってしまいます。

相続人の高齢化にともなう認知症リスク

相続手続きを行わず期間が経過したことで相続人が認知症になってしまった場合、その方が遺産分割の協議に参加できなくなることがあります。

遺産分割協議は相続人の全員一致が必要なので、ひとりでも協議に参加できない方がいると、そこで相続の話が進まなくなってしまいます。そうなると、認知症の方がお亡くなりになるか、成年後見制度を利用するまで、相続の話を動かすことができなくなってしまいます。

成年後見制度について、下記リンクをご参照ください。

相続した不動産の売却ができない

相続した不動産は、売却前に相続登記をして不動産を相続人の名義に変更しておく必要があります。

いざ売却の話が具体化しても、相続登記に手間取ると売却の手続きが進められません。そのため相続登記は、なるべく早い段階で済ませておくことをお勧めします。

ご存じですか?相続登記が義務化されます。

今般、相続登記が行われないままで放置されて、現在の権利関係が不明となってしまった土地の解消を目的とした法改正があり、これまでは任意だった相続登記が義務化されることになりました。

今後は決まった期間内に相続登記を行わないと、ペナルティ(過料)の対象とされる可能性があります。今後、相続登記を考えるうえで極めて重要となる、今回の法改正についてご紹介します。

制度の概要

相続登記を義務とする新しい制度は、令和6年4月1日からスタートします。

同日以降は、相続人が①不動産所有者の死亡と、②それによって自分が不動産を相続したことの両方を知ってから3年以内に相続登記の申請を行わないと、正当な理由がない限り法律違反となり、ペナルティの対象とされます。

なお、新制度のスタート前に相続人が上記①②を知っていた場合にも、改正後の制度の適用があるので注意が必要です。この場合、新制度の開始日(令和6年4月1日)から3年以内に相続登記を行わないと、同様に違反となってしまいます。

「相続人申告登記」制度の新設

上記のとおり、新制度では一定期間内に相続登記を行うことが義務づけられました。

しかし、相続人全体の権利関係を公示する登記を行うには、相続関係を確定できる範囲の戸籍をすべて収集する、相続人全員で遺産分割協議をまとめる等の作業が必要となり、事案によっては膨大な手間と時間がかかります。そこで、より簡便に相続登記の義務を果たすことができるようにする「相続人申告登記」の制度が新たに設けられました。

この制度は、相続人が、①不動産所有者が死亡したことと、②自分が相続人であることのみを法務局に申告することで、さしあたり相続登記の申請義務を果たしたことにしてもらえるというものです。この申告により、登記記録には申告をした相続人の住所・氏名などが記載されます。